自然と人の芸術コラボレーション 清津峡 十日町市

気が遠くなるほど長い年月をかけて作られた自然の芸術。
想像力と創造力をもって作られる人間の芸術。

自然と人。
ふたつの芸術を合わせたら、ここにしかない美しい風景が生まれました。

清津峡 十日町市

清津峡は、新潟県十日町市小出にある景勝地。特殊な岩肌の絶壁と、谷を流れる清流「清津川」が織りなす絶景が見どころです。

清津峡の雄大な渓谷美は「日本三大渓谷」のひとつに数えられ、国の名勝、天然記念物に指定されています。

清津峡で見られる「斜めにラインの入った岩壁」は、「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」とよばれる特殊な構造です。

柱状節理とは、火山活動によって形成された規則性のある岩肌のこと。地表に露出したマグマが冷えて固まるときに、四〜六角形のカタチになったものです。

清津峡の柱状節理は規則性がハッキリとして美しく、「自然の芸術」と呼ぶにふさわしい景観が望めます。

2018年、十日町市や津南町で開催された芸術イベント「大地の芸術祭」に合わせ、駐車場と清津峡の眺望エリアを繋ぐ「清津峡渓谷トンネル」がリニューアル。トンネル内に芸術作品の要素が加えられました。

このリニューアルで追加された作品のひとつが、SNSで話題になります。それが今や清津峡の代名詞的存在となった、トンネル最奥部の「水鏡」です。

水面や天井に反射した清津峡の渓谷美と、逆光によりシルエットとして映し出される人影のコントラスト。ここでしか撮影できない幻想的な風景が話題となり、清津峡に多くの観光客が訪れる理由となっています。

清津峡 体験記

いまや休日は渋滞の車列ができるほど人気の清津峡。平日とはいえ多少の混雑は覚悟して訪れましたが、意外にも駐車場は半分埋まるかどうかといったところ。直前まで雨が降っていた影響で人が少なかったのかもしれません。

駐車場わきにはお食事処やお土産屋さんが並びます。「まぼろしの味 渓流そば」。食欲をそそります。

駐車場のすぐそばからもう絶景。水が透き通っており、エメラルドグリーンの水底がよく見えます。

「清津峡渓谷トンネル」を通っていざ眺望ポイントへ。

トンネルを入ってすぐの受付で入坑料を支払います。

トンネル内は多色の照明に彩られ、進むたびに違った表情を見せます。

清津峡渓谷トンネルの長さは750m。トンネルの入り口からは緩やかな上り坂で、行きは実際の距離よりも長く感じられます。

トンネル内はBGMが流れているのですが、これがなんともいえない音楽で・・・「おどろおどろしい」とはこういうことなのかな、という曲。ちょっとした恐怖を感じます。

清津峡の成り立ちを紹介するインフォメーションパネル。数千年前の清津峡は、海底だったというから驚きです。

清津峡周辺の地形を模したジオラマ。

入り口から清津峡渓谷トンネルをしばらく進むと、最初の眺望ポイントの第1見晴所に到着します。

清津峡渓谷トンネル内には4つの見晴所があり、最奥の見晴所が「パノラマステーション」とよばれる水鏡のあるエリアです。

眼前に迫る切り立った壁。谷底を滑るように流れゆく清流。

最初の見晴所からしてこの眺め。この先に待ち受ける見晴所への期待感が高まります。

第1見晴所からトンネルをさらに奥へと進み、第2見晴所に到着・・・なにやらメタリックな半球体が異質な存在感を放っています。

実はこれ、トイレです。

鏡面仕様の壁はマジックミラー。外からトイレ内は見えませんが、内から外は見える仕様。トンネル内に突如として現れる鏡面反射の異物に驚く人たちの表情を楽しみながら、ゆっくりと用が足せます。そんなわけがない。

第2見晴所は、柱状節理の岩壁と、それを美しい弧を描きながら避けるように流れる清津川が見どころです。

さらにトンネルを進み、第3見晴所は・・・オームです。ジブリ作品「風の谷のナウシカ」に登場する「王蟲(オーム)」の中に入ったらきっとこんな感じ。赤いということは怒っていますね。

オームの「目」のように見える部分はすべて鏡。第2見晴所のトイレや、最奥部の水鏡も鏡面反射を利用した作品です。清津峡渓谷トンネルの作品は、鏡面反射の映り込みが使われているという点で統一されています。

第3見晴所からは、白波をたてて流れる清津川の急流と、陰影のクッキリとした見事な柱状節理の岩壁の風景が堪能できます。

4つの見晴所の中で、柱状節理の岩壁と清津川を最も近くで見れるのがこの第3見晴所です。間近に見る自然の芸術の迫力に、時を忘れて見入ってしまいました。

そして清津峡渓谷トンネルの最奥部に位置するのが、「パノラマステーション」と呼ばれ水鏡がある第4見晴所です。

パノラマステーションの最前部までは、水鏡の上を歩いて行きます。壁際は浅瀬になっているので、靴を履いたままでも大丈夫です。私が行ったときは靴を脱いで裸足で渡る人が多く、私も裸足で渡ることに。山水が利用されていることもあり、ひんやりとした冷たさを感じさせる水でした。

パノラマステーション最前面からの眺望。谷底を流れる清津川の清流と、V字型に開けた柱状節理の壁がおりなす渓谷美に感動します。こんな景色が新潟にあったことが驚きです。

本当に美しい。これを見たらもう「新潟には見どころがない」なんて言えなくなりますね。

川岸に目をやると、昔使われていた通路の名残を見つけます。壁伝いに続く柵のない通路。かつてはこの絶景を見るために危険な道を通って来なければならなかったのでしょう。今はいい時代になりました。

絶景を直に見たあとは、トンネル内から水鏡に映る渓谷美を堪能します。

水鏡に映し出された清津峡の風景。人が水鏡を歩くたびに水面が揺れて、渓谷美に表情を与えます。

水鏡は絶好の写真映えスポットですが、自分たちの集合写真を撮るには人の手を借りなければなりません。カメラを人に預け、水鏡の上を歩いて最前面まで行き、ポーズをとってようやく撮影。一連の動作がスムーズに行かず時間がかかるので、他人にカメラマンを頼みづらいのが難点です。
大役を任されたカメラマンのほうも、最前面の被写体まで届く声量で「はい、チーズ」といわなければならず、ちょっと恥ずかしい。声がトンネル効果で増幅されて思いのほか大声になり、自分で自分の声に驚かされます。

清津峡渓谷トンネルの大胆で奇抜な作品群は、中国の建築事務所「MAD architects」が手掛けた「Tunnel of Light」という芸術作品です。

中国語の動画ですが、言葉がわからなくても清津峡と清津峡渓谷トンネルの見どころがわかります。ご覧になってみてください。

これまで新潟には胸をはって「景勝地」といえるところがない、と感じていました。見どころが少ない県、それが新潟県。私を含む多くの新潟県民はそう感じていると思います。

そんな新潟県民の悩ましさを、清津峡は素晴らしい絶景で解消してくれます。清津峡でしか見られない見事な柱状節理の岩壁、美しいエメラルドグリーンの水底が映える清津川の急流。ただ見るだけでも美しいそれらの清津峡の風景に、人の手が加えられることで、より多彩な楽しみ方ができる観光スポットとなりました。
新潟県民はいちど清津峡を訪れることで、新潟を訪れる観光客の質問に怯える日々に終止符を打つことができます。

ただ、なんでしょう、実は、「清津峡は新潟市よりも、他県の長野市や前橋市のほうが近い」という事実は、新潟県民の秘密ということになりますか。

日本三大峡谷 清津峡(公式HP)
清津峡渓谷トンネル(Googleマップ)
Tunnel of Light – 大地の芸術祭の里