心が求めるもの 星のや軽井沢

もし余命わずかな身で、人生最後の旅先を選ぶとしたら。

私は迷わずこの宿を選ぶのだろう、そう思います。

星のや軽井沢

星のや軽井沢は、長野県北佐久郡軽井沢町にある温泉旅館。昨今、積極的な海外進出で話題のリゾート運営会社「星野リゾート」創業の地です。

星のや軽井沢、最大の魅力。それは日本の原風景のような「水辺の集落」に滞在することで得られる「癒やしとくつろぎの時間」です。

意外と普通、そう思われたかもしれません。
けれど星のや軽井沢のソレは、私たちが知るソレとはかけ離れた非日常的なものです。

鐘、鈴、銅鑼。
オリエンタルな音色が部屋を包みます。

チェックインで通された小部屋では、和の打楽器による生演奏が待っていました。部屋には私たちと奏者のみ。突然の非日常体験。空気を震わす打楽器の音色が、日常とは異なる場所に来たのだと心に伝えます。

塀で囲われた宿の敷地内に足を進めると、まるで映画のセットのような風景に心が奪われます。

せせらぎを奏で流れゆく川、木漏れ日に照らされる緑多き丘。
時折、カモの親子が目の前を泳いでいきます。

美しくも懐かしい水辺の風景。

まだ着いて半刻ほどだというのに、心は日常をすっかり忘れていました。

くつろぐなら家でもできる。
今はその考えが間違いだとわかります。

私はこの部屋で本当の「くつろぎ」を知りました。

高くゆとりある天井、広い室内、大きな窓から差し込む木漏れ日の優しい光。
テレビなど余計な備品は一切なく、照明は必要最小限。薄暗い室内は、自分の息づかいに気がつけるほど静かです。

堀りゴタツ式のテーブルソファ。昨今、「人をダメにするソファ」が話題になりましたが、これは「人を液状化するソファ」。一度座ったが最後。あまりの気持ちよさにドロドロに溶けてソファとクッションに同化します。
何もしない、したくない、しなくていい。肯定的な怠惰のなすがまま、贅沢な時間を過ごします。

暗くなり明かりが灯されると、集落はまるで異世界のような幻想的な雰囲気になります。水面に揺れる部屋の明かりが印象的でした。

夕食はメインダイニングの「日本料理 嘉助」でいただきます。

嘉助の料理は、旬の食材を使った懐石料理。料理人の繊細な仕事が加えられた料理を、五感で感じながらゆっくりと味わいます。

味わうのに夢中で、後半は写真のことをすっかり忘れていました。

夕食後は親しくなったスタッフの勧めで、近くの森を散歩することに。灯りに照らされた水辺の散歩道を、水に落ちないようにゆっくりと歩きます。

けた違いとはいえ、星のや軽井沢も温泉旅館。ということは温泉があるわけです。が、やはりというべきか、星のや軽井沢は温泉も驚きと感動に満ちあふれています。

星のや軽井沢の温泉は「メディテーションバス」と呼ばれています。メディテーションとは「瞑想」という意味。体験前は温泉と瞑想が結びつかず困惑しましたが、いざ体験してみると温泉も瞑想もリラックス効果を得るという点で共通すると気がつきます。

メディテーションバスには「光の湯」と「闇の湯」という2つの浴場があります。特筆すべきは闇の湯。闇の湯はその名が示すように真っ暗で狭い小部屋です。自分以外に誰がいるのかも判らず、暗所や閉所の恐怖症でない私でも怖さを感じます。なぜこんな温泉がここに?最初は困惑します。しかし恐怖を抑えて墨汁のような温泉に身を沈め続けると、なんともいえぬ感覚が全身を覆っていくのがわかります。目からの刺激を遮る暗闇、チャプチャプと心地よい水音、全身を包む暖かなお湯。はじめて感じたようで懐かしくもある不思議な感覚。
温泉から出るころには、生まれ変わったような真新しい気分になっていました。

メディテーションバスで生まれ変わった後は、ライブラリーラウンジで本を読んで過ごします。
普段は楽しむための読書はしませんが、このライブラリーラウンジでは本を読みたくなるから不思議。やはり生まれ変わっているようです。

朝。朝食に訪れた嘉助からは、風光明媚なテラスの風景を眺めることができました。

朝食はキノコ鍋を中心とした体に優しそうな料理が並びます。

美しい風景と、美味しい朝食。
贅沢な朝のひとときを過ごしました。


在るべきところに帰ってきた

滞在中、幾度となくそんなことを思いました。はじめて訪れた星のや軽井沢に懐かしさを感じる。日常とはかけ離れたこの温泉旅館がなぜか愛おしい。

星のや軽井沢を思い返すとき、いつも心がどうしようもなく想い焦がれるのを感じます。帰りたがっている、そんな感覚です。
短い滞在だったものの、心は自らが必要とするものを敏感に感じ取り、星のや軽井沢を「あるべき場所」と定めたのでしょう。私が思っていた以上に、私の心は、星のや軽井沢の滞在で満たされ、充足を感じていたようです。

心が求めるもの。
星のや軽井沢には、それがあります。

星のや軽井沢(公式HP)
星のや軽井沢(Googleマップ)
星のや軽井沢(楽天トラベル)